【第116回】貨物新幹線は敵か味方か?

点の速達と面の大量輸送
2026年3月のダイヤ改正で、E3系を改造した貨物新幹線「はこビュン」が本格始動します。SNSでは「JR貨物の仕事が奪われるのでは?」という懸念の声も散見されますが、それは完全な誤解です。
以前、通運の歴史をご紹介した際にも触れた、近代郵便の父こと前島密。彼は明治の鉄道黎明期に、それまでの飛脚問屋たちに対して「手紙(通信)は政府が担う。君たちは運送のプロとして荷物を担ってほしい」と説き、役割分担を提案しました。今回の貨物新幹線とJR貨物の関係も、まさにこの役割分担そのものなのです。
まず注目すべきは、輸送力の圧倒的な差です。貨物新幹線「はこビュン」の積載目安は段ボール約1,000箱とされていますが、これはJR貨物の12フィートコンテナ(1箱をみかん箱サイズとして約550箱積載)に換算すると、わずか1.8個分に過ぎません。
対するコンテナ列車1編成(26両)は、一度に最大650トン。12フィートコンテナなら130個、箱数にして約71,500箱分に相当します。実にトラック65台分を運転士一人で動かす大量一括輸送の王者は、依然としてJR貨物。新幹線はスピード、貨物列車はキャパシティという、完璧な棲み分けがなされているのです。
海外で進む「ベルトコンベア方式」という次世代の衝撃
しかし、目を世界に向けると、量か速さかという二択を過去にする革新が始まっています。ドイツで開発中の次世代貨物リニア「TSB Cargo」は、これまでの鉄道の概念を根底から覆します。
特筆すべきは、機関車で長い列を引き連れるのではなく、最大45フィートの大型コンテナまで積載可能な台車自体に動力(正式には推進用のリニアモーター)を持たせ、最短25秒間隔でコンテナを次々と送り出す、ベルトコンベア方式である点です。このペースで送り出し続ければ、1時間で144ユニット。これは先述したJR貨物の26両編成(コンテナ130個)を、わずか1時間で上回る輸送密度となります。
一度にドカンと運ぶのではなく、絶え間なく小刻みに流し続ける。この発想の転換は、深刻な労働力不足に悩む物流業界にとって、新たな救世主となる可能性を秘めています。そしてこの「リニアで運ぶ」という仕組みが、実は古くからルート選定の頭を悩ませてきた「あの難題」をも解決しようとしているのです。
次回に続きます。











