【第117回】勾配100パーミルの衝撃

車輪とレールの限界点
鉄道にとって勾配は、古今東西変わらぬ最大の宿敵です。先日行われた名鉄カルチャースクール講座「キニナル!鉄道貨物」の中でも、各地の難所について数値と共に取り上げました。
日本の貨物輸送の難所といえば、山陽本線の瀬野~八本松間、いわゆる「セノハチ」の22.6‰。補助機関車が後押しする光景は圧巻ですが、それは鉄の車輪が鉄のレールを掴む「粘着運転」の物理的限界との戦いでもあります。
他にも、大阪のど真ん中に新たに出現した、俗称うめきた峠(23.5‰)や、多治見通運近郊の旅客路線と比較すれば、私が観光大使を務める明知鉄道の日本一の普通鉄道急勾配駅でもある飯沼駅(33.0‰)、そして名鉄豊田線(34.5‰)など、身近な路線も日々地形と闘っています。
かつて信越本線の碓氷峠が挑んだ66.7‰は、まさに鉄と鉄の摩擦だけで克服できる極限値。鉄道の歴史は、傾斜をいかに克服し、安全に旅客や貨物を運ぶかという知恵比べの歴史でもありました。
崖さえも最短ルートに変える技術
ところが、この物理の限界を磁気の力で軽々と飛び越えようとしているのが、前回ご紹介した、ドイツで開発中の「TSB Cargo」です。驚愕すべきはその登坂能力。なんと10%!
鉄道ファンなら二度見する数値ですが、10‰(パーミル)ではなく10%(パーセント)、つまり10メートル進んで1メートル上がる勾配。もはや坂道ではなく崖です。愛知のリニモが浮上式で60‰の丘陵地を克服した際も驚きましたが、その比ではありません。もし10%(100‰)が実用化されれば、山を迂回するループ線も、長大なトンネルも不要になります。これまで地形に合わせて引かれていた線路が、目的地まで直線で結ぶ道へと変わるのです。
日本は在来線の多くが狭軌である1067mmの線路幅ですし、そもそも高頻度運転ともなれば別で線路を敷く必要があるでしょうから、海外で成功したとしてもすぐに導入することは難しいでしょう。それでもおとぎ話ではなく、すぐそこに迫っている現実の未来だと思うと、なんだかワクワクしてきます。











