Tajimi Express Co.,Ltd Presents

鉄道アーティスト・鉄道コンテナアドバイザー小倉沙耶の通運ってこんなにおもしろい!

カボチャ団体の陳情。

前回の続きです。

 

大正12年9月に東京を襲った関東大震災。この翌年、東京の復旧・復興予算確保のため、石北線建設が凍結されました。それは困ると、遠軽村では国会へ直接請願するための石北線鉄道速成陳情団が結成され、東京へ出発。自己負担金50円と、当時の小学校教員初任給にあたる金額も厭わず陳情に出た遠軽の人々に、なんと1万円という高額の援助がありました。支援したのは、当時、東洋のパン王とも呼ばれた水谷政次郎。水谷は大阪のパンメーカー「マルキパン」の創始者で、北海道産小麦の品質に着目、足寄で品種改良を行っていました。その後、石北線開設による輸送を見込んで丸瀬布の農場を買収し、遠軽に事務所を構えていたのです。水谷からの援助があり、陳情団は自己負担金を出すことなく、運動へ専念することができました。しかし、それでも経費は切り詰めなければいけません。国会へ陳情を続ける間、彼らは俵に詰めて地元から貨物列車で送ったカボチャを煮炊きし、弁当箱に詰めて食べていました。その姿はマスコミの目に留まり「カボチャ団体の陳情」として新聞にも掲載。鉄道省仙石大臣への団交では「この鉄道が建設されなければ、米どころかカボチャさえ食べられず、飢え死にするしかありません」と陳情団団長が訴え、「団長の言う通りです」と団員が男泣き、警備に立つ警官ももらい泣きをしたのでした。その様子は新聞に取り上げられ、世論も注目。大臣は、工事計画を再検討することを約束しました。流通への大きな熱意が、国を動かしたのです。

 

昭和7年の石北線全線開通により、名寄本線(平成元年廃線)との分岐点でもある遠軽にはあらゆる物資が行き交い、計り知れない経済効果を生みました。

 

様々なものを運ぶ、鉄道貨物輸送。体内で血液が循環するかのように、鉄路によって日本の隅々に各地のモノと思いが運ばれています。その中には、物流への大きな期待を背負って誕生した路線があることも忘れてはなりません。

 

多治見通運の鉄道コンテナ輸送についてはこちらをご覧ください
http://www.tajimituuun.co.jp/railway-container.html

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小倉沙耶

PROFILE

小倉沙耶 こくら・さや

鉄道コンテナアドバイザー・鉄道アーティスト
都市交通政策技術者

1980年3月30日生まれ、愛知県豊橋市出身で現在は兵庫県伊丹市在住の鉄道アーティスト。子供の頃から母の実家である長崎に寝台特急「さくら」で何度も帰省し、その鉄道の旅情に魅了され、鉄道ファンとしての情熱を抱く。
2002年から「鉄道アーティスト」としての活動を開始し、テレビ・ラジオ出演や執筆活動だけでなく、鉄道イベントの司会や企画、講演なども手がけている。モットーは「鉄道に関わる全ての方が、笑顔でいられるためのお手伝い」。
2009年には明知鉄道観光大使に就任し、2013年には京都大学大学院工学研究科低炭素都市圏政策ユニットより都市交通政策技術者(第112号)に認定された。
2022年からは一般社団法人交通環境整備ネットワークの審議役を務め、通運の経験を生かし、鉄道コンテナアドバイザーとしても活動している。2021年には出産し、乳幼児連れでの公共交通利用促進と周囲の理解についてメディア・イベントなどで積極的に発言している。
鉄道趣味の中心は気動車・貨車・古いレールであり、その情熱を通じて広く鉄道文化の普及に尽力している。