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鉄道アーティスト・鉄道コンテナアドバイザー小倉沙耶の通運ってこんなにおもしろい!

鉄道コンテナ輸送のBCP対策ってどうなってるの?《物流の安定供給への取り組み—その1》

多治見通運とJR貨物東海支社は5月10日に連名で「災害時の鉄道コンテナ輸送に関するバックアップ体制の構築について」というニュースリリースを発表しました。これまで、大規模な災害が発生した場合には『自然災害と通運業界』※でお伝えしたように、オール通運会議を経てトラックや船舶による代行輸送が組まれていました。しかし、会議を経て代行輸送が輸送予約システムであるIT-FRENSに組み込まれるまでには、1週間程度かかり、それまではJR貨物側としてはなすすべがなく、通運側が何らかの手段を講じて、別の形で着荷主までお届けをしていました。

BCPという言葉をご存じでしょうか。Business Continuity Planの略で、日本語では「事業継続計画」といいます。豪雨や地震など災害の多い日本では、これらに巻き込まれた際にどのようにして通常の業務に戻せるか、継続できるかが大きな課題となっています。災害で不通となった場合に輸送が止まってしまう貨物鉄道輸送は、利用を考える企業にとって、BCP対策の上では不安定な存在でした。荷主企業だけでなく、通運やJR貨物にとってもそれは同じことで、どうするかが課題など、これまでは迅速な代替体制を整えることができませんでした。

今回の取り組みは、大規模な災害等が発生して鉄道輸送網の一部が寸断した際に、物流の安定供給を図るため、貨物駅をクロスドックとして活用することによって、輸送網のバックアップ体制を構築するものです。クロスドックとは、荷物を開梱することなく積み替えのみ行う拠点や仕組みを指します。輸送センターなどにも似ていますが、あくまでも積み替えのみ行うものなので、場所と積み替え手段を構築しておけば実行が可能です。

今回の体制を考えるきっかけは、多治見通運関谷社長から、運送部への

「鉄道コンテナ輸送のBCP対策ってどうなってるの?」

という言葉からでした。実際、災害が起きた時に後手の対応になっている状態から脱するために、通運として何ができるのかを突き詰めた結果、まずは付き合いのある通運と手を組み、JR貨物とも協力してクロスドック体制を整えようという形になりました。実際、各通運に声をかけたところ、二つ返事で「お願いします」という声が返ってきたところもあったそうです。

そして5月26日に多治見通運と、協力に応じた高崎通運栃木県北通運の3社が協力し、南松本駅にて輸送訓練が行われました。次回はその模様をお伝えします。(敬称略)

 

『自然災害と通運業界』についてはこちらもご覧ください
https://www.tajimituuun.co.jp/blog/archives/190

 

多治見通運の鉄道コンテナ輸送についてはこちらをご覧ください
https://www.tajimituuun.co.jp/railway-container.html

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小倉沙耶

PROFILE

小倉沙耶 こくら・さや

鉄道コンテナアドバイザー・鉄道アーティスト
都市交通政策技術者

1980年3月30日生まれ、愛知県豊橋市出身で現在は兵庫県伊丹市在住の鉄道アーティスト。子供の頃から母の実家である長崎に寝台特急「さくら」で何度も帰省し、その鉄道の旅情に魅了され、鉄道ファンとしての情熱を抱く。
2002年から「鉄道アーティスト」としての活動を開始し、テレビ・ラジオ出演や執筆活動だけでなく、鉄道イベントの司会や企画、講演なども手がけている。モットーは「鉄道に関わる全ての方が、笑顔でいられるためのお手伝い」。
2009年には明知鉄道観光大使に就任し、2013年には京都大学大学院工学研究科低炭素都市圏政策ユニットより都市交通政策技術者(第112号)に認定された。
2022年からは一般社団法人交通環境整備ネットワークの審議役を務め、通運の経験を生かし、鉄道コンテナアドバイザーとしても活動している。2021年には出産し、乳幼児連れでの公共交通利用促進と周囲の理解についてメディア・イベントなどで積極的に発言している。
鉄道趣味の中心は気動車・貨車・古いレールであり、その情熱を通じて広く鉄道文化の普及に尽力している。