Tajimi Express Co.,Ltd Presents

鉄道アーティスト・鉄道コンテナアドバイザー小倉沙耶の通運ってこんなにおもしろい!

封印環の怖い話。

 

季節は夏。暑い日が続いていますから、今回は寒くなる話をいたしましょう。

 

通運勤務時代のある日。私は早朝勤務だったので、IT-FRENS輸送中のコンテナ位置を照会していました。前日に列車へ積まれて出発したコンテナが、予定通りのルートで到着駅へ向かっているか、遅れが出ていないかを一つ一つ確認するのが、朝一の業務なのです。

 

あ、ちょっとだけ遅れがでているな…1時間くらいなら経由駅でも余裕があるし、きっと大丈夫。念のため到着時刻にもう一度確認しておこう。この急ぎのコンテナは…よし、無事に到着駅へ着いているな。さて、このコンテナは結構ギリギリの予定なんだよなあ…そろそろ関東圏に入ったかしらね…

 

【所在:名古屋タ】

 

…ん?あれ?更新されてないのかな。とりあえず同じ列車に載せた、他のコンテナの照会をしようか。うん、動いてる動いてる。じゃあさっきのコンテナをもう一回…

 

【所在:名古屋タ】

 

…んんん?どういうこと?

 

恐る恐る、私は駅のフロントへ行きました。当該のコンテナについて尋ねると、背中を見せていた担当の方がゆっくりとこちらを振り向き、恐ろしい言葉を発したのです…

 

「ああ、そのコンテナ。積み付け確認の時に封印環忘れだったのではねられてますね

 

前回(『「封印環」って?』)、IT-FRENSへは封印環番号を入力する必要があるとお伝えしました。きちんと入力され、不備がなければ発送準備が完了となり、ここからはJR貨物さんにお任せとなります。JR貨物さんはそれぞれのコンテナを貨車に載せ、荷役が完了すると、積み付け検査が行われます。ここで、コンテナがきちんと緊締装置(コンテナを貨車に固定するための装置)に緊締されているか、コンテナの扉を開閉するためのカム軸が外れていないか、封印環が付けられているかなどがチェックされます。

 

そこで封印環が取り付けられていなかったということで、フロントから電話連絡が入りました。ごくまれに同じような事態が起きても、普段であればドライバー若しくは事務所の人間が確認し、封印環を取り付けて事なきを得ます。しかし、列車出発が深夜であり、積み付け確認が行われたのは事務所の人間が全員帰った後。出発に間に合わず、そのまま名古屋貨物ターミナル駅に置いてけぼりとなったのでした。

 

慌てて最速の列車枠を確保し、コンテナを発送することができましたが、お客様への説明に肝を冷やしたことはご想像いただけるかと思います。

 

その後、二度と同じミスが起きないよう、チェックの強化等を行うようになりました。また、封印環忘れやカム軸外れ等の情報は、同じ駅で作業を行う全ての通運やJR貨物の様々な部署の代表者が集まる月例会議にて共有され、一丸となって再発防止に取り組んでいます

 

ああ、今思い出しても背筋がぞっとする…そんな苦い思い出でした。

 

多治見通運の鉄道コンテナ輸送についてはこちらをご覧ください
http://www.tajimituuun.co.jp/railway-container.html

小倉沙耶

PROFILE

小倉沙耶 こくら・さや

鉄道コンテナアドバイザー・鉄道アーティスト
都市交通政策技術者

1980年3月30日生まれ、愛知県豊橋市出身で現在は兵庫県伊丹市在住の鉄道アーティスト。子供の頃から母の実家である長崎に寝台特急「さくら」で何度も帰省し、その鉄道の旅情に魅了され、鉄道ファンとしての情熱を抱く。
2002年から「鉄道アーティスト」としての活動を開始し、テレビ・ラジオ出演や執筆活動だけでなく、鉄道イベントの司会や企画、講演なども手がけている。モットーは「鉄道に関わる全ての方が、笑顔でいられるためのお手伝い」。
2009年には明知鉄道観光大使に就任し、2013年には京都大学大学院工学研究科低炭素都市圏政策ユニットより都市交通政策技術者(第112号)に認定された。
2022年からは一般社団法人交通環境整備ネットワークの審議役を務め、通運の経験を生かし、鉄道コンテナアドバイザーとしても活動している。2021年には出産し、乳幼児連れでの公共交通利用促進と周囲の理解についてメディア・イベントなどで積極的に発言している。
鉄道趣味の中心は気動車・貨車・古いレールであり、その情熱を通じて広く鉄道文化の普及に尽力している。